交友関係が広いクライアントご夫妻は，来客のおもてなしを大事にしたいと考えていた．
そしてお子さんを安心して遊ばせられる環境をつくりたい，また植物を育てるのが好きで生活のなかに庭を感じる暮らしがしたいという夢があった．

それらどの条件をとっても，玄関レベルは低くつくる方が望ましいのは明らかであった．
一方でリビングレベルはプライバシーに配慮して道路から少し高めにつくる必要があるため，基本設計の初期段階からスキップフロアの計画を提案した

日当たりの良い南向きの勾配地，周囲にはハウスメーカーが建てた画一的な形の家が比較的多いエリア．
ご家族みんなの夢を全て叶え，そしてこの周辺環境の中でしっかりとしたアイデンティティを持つ家はどういうものなのか．
基本設計中に，自問自答を繰り返した．

同じような広さの敷地が続く分譲地のなかで，外観はシンプルで明快でなければならない．
一本のスカイラインを片流れに爽快に通しつつ，左右でブロックを分けることで親密で愛着のわくボリューム感を生み出した．

家の中心にはライトコートを設け，その周囲を取り巻くように動線を展開．
アプローチの長さや玄関の向き，そして各ゾーンのクローズ感とオープン感のメリハリを強く意識してプランニングしたことで，周辺環境や外部空間との関わりが絶妙な家に仕上がったと思っている．

庭を見たり空を見たりまた遠くの向かいの山並みを見たり，家の中で生活をするだけで気分が楽しくなるような，そんな家を目指した．

用途　一戸建ての住宅
竣工　2021年10月
施工　株式会社アール・ワン
写真　松本朋也⁡⁡