建築家と建てるvol.3

「家事動線と収納を科学した平家住宅」

リビングにはエアリアルヨガと雲梯、必要なものだけを厳選した心と時間に余裕のある暮らし

建築家と建てるvol.3は、建築家がクライアントである永井夫妻の「どう暮らしたいか」を丁寧に掘り下げ、理想の暮らしを実現した平家住宅。
今回は、クライアントの永井夫妻、棟梁大工で矢羽田工務店代表取締役の矢羽田氏を交えて4人でお話しさせていただいました。

写真左・中央:永井様ご家族 / 写真右から二番目:矢羽田工務店 代表取締役 矢羽田氏

自分達に必要なものだけをデザインする

永井夫妻が祖母から譲り受けた築45年の家の建て替えを計画したのは2年前。愛着はあるものの、昔ながらの建物での生活は収納面など不便なところも多かったそう。余計なものは要らないから、日々の生活の中でスムーズに片付いていくような家にしたいという想いと、子供に少しでも運動してもらいたいと考えていた雲梯がある暮らしを実現。あるべき場所に必要なものがあるオンリーワンの平家住宅が完成。

素の部分を知っているからこそ

北條

実は永井先生(ご主人)は、中学3年生のときの恩師なんです。博識でいらっしゃるので、クイズ番組でご活躍される姿もよく拝見していました。社会科の先生でしたが、陸上部の顧問としてグラウンドで声が響いていた印象が強いですね(笑)

ご主人(永井先生)

タイムショックとかアタック25とか、知らないかもしれないけどホールドオンとかね(笑) 北條さんと久しぶりに再会したのは6~7年ほど前だったかな?家のポストにリフォーム会社のチラシが入っていて、その当時はリフォームの計画もなかったけど北條豊和という名前を見て見学会に参加したんですよ。

北條

リフォームのチラシは前職のときで、まだ独立する前でしたね。

ご主人(永井先生)

年賀状のやり取りはしてたから独立をしたことも知っていたし、家の建て替えを検討することになって彼に相談をしました。北條さんは真面目な生徒でしたし、まっすぐが過ぎるところもあるけど良い意味でこだわりが強い。彼の人柄を知っていたから相談しようと思ったし、そこは決め手の一つではありますね。

クライアントファースト

矢羽田氏

北條さんは普通じゃ考えつかないことを図面にして持って来られるので「まず、どうやって実現する?」ってところからスタートなんです。言ったらダメですけど全部がめんどくさい (笑)。でも、北條さんのめんどくさいことは常にクライアントの夢を叶えるためだから、「絶対この通りに仕上げよう!」って思うんです。この家の雲梯もそうだし、軒先の通気口もすごく斬新ですよね。

北條

どうやったらきれいに見えるかを考えて、ステンレスのパンチンングメタルをビス留めするスケッチを渡したんですけど、男気を見せてビス無しでいくと言って軒先の鼻隠しに溝を掘ってパンチングメタルをスライドさせて取り付ける施工にしてくれたんです。でも、何度か手直しに来ていただいてますよね。

矢羽田氏

ビスで留めていたら手直しは必要なかったはずです。けど、見た目の美しさが違いますから。雲梯も現場で北條さんにスケッチを見せてもらってオーダーで作りましたね。

奥様

雲梯をつけたいと考えていたけど、エアリアルヨガのフックも木枠をつけて天井から吊したものしか見たことがなくて、せっかくのデザインが‥と思っていたんですが、雲梯とあわせてコンパクトにしてくださいました。こんなスッキリとしたデザインのものを見たことがなかったので感動しました。

ご主人(永井先生)

工務店4社で見積合せをした中で、矢羽田さんは今どきホームページもないし最初は1番ないかなと思っていた(笑) でも、仕事に対する姿勢や人柄を見て、見積りも頑張ってくださったし矢羽田社長に依頼しました。とても親身になってくださるし北條さんと矢羽田さんにお願いして良かったですね。

クライアント・設計・工事の連動が良い建物をつくる

矢羽田氏

みんなで話し合って決めていく定例会議は楽しかったですね。毎回いろいろな意見があって、それに近づくように建物を完成させていく。

北條

クライアント・設計・工事の3者が「決めないといけないことをちゃんと決めて任せるところは任せる」というのをきちんと連動するとすごく良い建物ができると思います。それから、永井先生の建築工事の理解度の高さには驚きましたね。建築のプロなのかな?と思うほど専門的な話もすぐに理解してくださるので、何故そこがそうなっているのか、どのように対処していくのかなど、全部整理ができる関係でしたね。

ご主人(永井先生)

今、何のためにこの工事をしているのかを把握したかったので、例えば基礎工事をしている時は「基礎ってどんなものだろう」とネットでずっと調べてましたね。

矢羽田氏

永井さんは部材の名前全部ご存じでしたからね。「それ知ってるんですか?」って驚きました。

ご主人(永井先生)

「あぁ、あそこね」みたいな感じでね。設計図書はよく見たし、一つ一つ現場が進んで行く中でしっかり納得しながら家が完成して行きましたね。

建築家と建てた住まい

奥様

「どう生活したいですか?」「何を大事にしたいですか?」っていう暮らし方の想いを丁寧に聞いてくださいましたね。家族3人の希望を全部叶えてもらいました。私のワークスペースはプライベートな空間にもなって、家族の様子も見ることができる。すごく良い居場所を作ってもらえましたね。

北條

何かをしながら何かをするというのは、一つのことに集中して周りが見えなくなると言う発想ではないんですね。個別の場所にワークスペースが欲しいというご要望を聞きましたけれども、他が見えないと逆に心配になって安心して作業することができないだろうなという思いがあったので、他に干渉しないエリアに計画しつつも、他が見えるという発想をキープしました。

奥様

うちは物がすごく多いし夫婦共働きなので、家事はまとめて休日にすることも多いんです。日々の生活の中でスムーズに片付いていくような家にしたいって相談したら、その要望を受けとめてくださって。

北條

収納するいろいろな物のあるべき場所によって、通路を通り抜けながら片付けられるように収納を分散配置して、家事動線は限られた時間の中で何かをしながら何かがついでにできることを目指しました。

奥様

洗濯物をそのままクローゼットにハンガーごと掛けられるスタイルにしていただいたので、週末にしていた家事が日々の生活で自然にできるようになって、時間に余裕ができました。衣替えもしなくて良いからすごく助かってます。 設備のことも的確にアドバイスをくださって、家の性能が高いから余計な設備を導入することもなく、年中快適に過ごせています。専門的な知識をもって「出来る」「出来ない」を納得できるように教えてくださるので安心してお任せできました。