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日々是建築コラム
2021年03月06日日々是建築コラム 3章 監理と管理
今回は、「監理」と「管理」の話です。
これら読み方は同じく「カンリ」ですが、意味は全く異なります。
この2つの「カンリ」を知れば、建築工事のプロセスがわかりやすくなるので、ぜひ知っていただきたいと思います。
読み方が同じなので、業務会話の中では区別をつけるために、監理は「サラカン」、管理は「クダカン」もしくは「タケカン」と呼び分けることが多いです。
【監理(サラカン)について】
これは「公益社団法人日本建築士会連合会」のホームページや、国土交通省住宅局が発行している資料に詳しく書かれているので、それらを参考にわかりやすくまとめたいと思います。
また「監理」を理解するためには、「工事監理」との違いについても知っていただく必要があるので、ここで少し掘り下げます。
(一社)新・建築士制度普及協会から発行されている「工事監理ガイドライン講習会テキスト」に下の参考資料が載っています。
語弊を恐れずざっくり言うと、工事監理は監理の内の一部です。
工事監理は建築士法第2条第8項に規定される建築士の独占業務であり、法文には「・・・、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認することをいう。」と書かれています。
要するに、工務店やゼネコンなどの施工者が行っている工事が、きちんと設計図書の通りに行われているかをチェックすることが、工事監理だということです。
さらに、チェックした結果、その工事が設計図書の通りになっていない場合は、
① 施工者への指摘、是正指示を行うこと、
それでも施工者が指示に従わない場合は、
② 建築主への報告を行うこと、
が定められています。
①②は、工事監理業務を受託した建築士の義務になります。
さて、ここで話を「監理」に戻します。
この監理という言葉を我々建築士がよく目にするのは、監理業務受託契約書です。
実際、建築工事を進めていくためには、その発注者が建築主として施工者とさまざまなやりとりをしていかなくてはなりません。
工事がはじまってから終わるまでの工事内容のチェックだけではなく、施工者の選定から、見積比較・査定、予算に対する工事費の調整、工事請負契約の内容の精査、工事中の明細のチェック、工事の追加変更の対応など、ハードルは数え上げればキリがありません。
それらのハードルを越えていくために、建築主の代理人としてプロジェクトを総括しながら施工者との協議・調整を行うのが監理者であり、その業務が監理と呼ばれます。
少し見方を変えてみると、監理は建築士法の枠を超えた、工事を建築主の意向に沿って運営するために必要なあらゆる作業と言えるかもしれません。
一般的には監理と工事監理は同じ建築士が行うことが多いです。
同じ建築士でも、監理業務受託契約上は監理者と呼ばれ、確認申請などの法令上は工事監理者と呼ばれます。
一般の方に知っていただきたい一番大事なことは、工事監理も含めて監理業務を行う建築士は、建築主(工事の発注者)の代理人であり、工務店やゼネコンなどの施工者とは切り離された第三者であるということです。
消費者である建築主の利益と財産を守るために、建築士による監理をうまく使っていただきたいですね。
【管理(クダカン・タケカン)について】
前半の話に比べると、「管理」の方が、馴染み深くてイメージしやすいかもしれません。
これはわかりやすく言うと、現場監督の仕事のことです。
施工管理と言うこともあります。
資格としては、「監理」が建築士の仕事であるのに対して、「管理」は施工管理技士の仕事です。
工事現場で働く職人や作業員の仕事を監督・統括することがその主な役割になります。
建築主と約束している工期内にスムーズに工事を完成させるために、綿密なスケジュールを組み、資材や機材、そして作業人数の調整を行うことも重要です。
また、建築主と約束している工事費の中で、施工会社として利益を残さないといけないので、現場監督は工事を常に合理化することを考え、できるだけ無駄な経費がかからないように工夫することが求められます。
「監理」と「管理」について、なんとなくでもご理解いただけましたでしょうか。
監理は委託業務、管理は請負業務であることも、その違いを理解する視点かもしれません。
少しでも安心して、納得のいく工事をしてもらうために、これらの知識を活用していただければ幸いです。
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