日々是建築コラム 4章 ハウスメーカーのこと|環創研/北條建築事務所

日々是建築コラム

2021年03月20日日々是建築コラム 4章 ハウスメーカーのこと

本章では、建築の中でも住宅に絞った話をしてみましょう。

もし、家を建てるとなったら、皆さんはまずどこに相談をされるでしょうか。

 

昔(と言いましてもずいぶんと昔)は棟梁と呼ばれる地元の大工の頭にお願いして、地域ごとにだいたいよく似た形の家をどの家庭も建ててもらっていました。

しかも一度建てたら、基本的には何世代も住まい続ける。

 

我々建築家が今になって振り返れば、それが日本的な美しい街並みや里山の景観を守る重要なファクターだったと気づくのです。

 

そのことは、みんな意識して目を背けているのかと思える程、顧みられる機会はあまりありません。

 

今でも地方の農村や漁村へ行けば、家に対する伝統的な考え方が残る地域もあります。

しかし日本は戦後の経済成長期を経て、家の間取りや形を自由につくる考え方が主流になりました。

 

どのやり方が良いとか悪いとか、そういった事を書こうとは思わないので、事実のみを淡々と書き述べる章にしたいと思います。

 

 

【設計施工一貫という考え方

 

まず、「設計」「施工」について考えてみましょう。

 

極端にシンプルにまとめると、「設計」は考えること「施工」はつくることです。

その設計と施工にはそれぞれ別の資格登録が必要になります。

 

設計(監理)業務は、建築士法に定められていて、建築士事務所の登録が必要です。

また、工事請負業務は、建設業法に定めがあり、建設業の登録が必要です。

 

現代建築において、この本来異なる二つの業務がセットになっているのが、設計施工一貫という方式になります。

 

特に欧米と比べ日本では、設計施工一貫かつ、規模の大きい施工会社で家を建てる人の比率が多い傾向にあります。

 

 

【ハウスメーカーという業態

 

ハウスメーカーという業態は、日本にしかないと言っても過言ではありません。

 

その特徴を簡単に列挙すると・・

出来上がる建築自体に対して高コストで、粗利率が大きく、中身は画一的で、設計の自由度が低く、ネームバリューがあり、消費者心理として安心感や信頼感がある、、、

 

といったところでしょうか。

 

全国至る所に住宅展示場があり、テレビをはじめさまざまなCMをたくさん行っていることも、重要な特徴です。

 

アフターメンテナンスを売りの一つにしていることも耳にしますが、そんなものは昔から当たり前の話です。

地元密着の昔ながらの工務店も、実の伴ったアフターメンテナンスを誠心誠意やっています。

 

保証がしっかりしているのでは、ともよく言われますが、建築に本当の意味での保証なんていうものはありません。

施工不良(瑕疵)があれば、無償対応(保証)をするのが筋ですし、それが使い方の問題や経年劣化(瑕疵無し)であれば、有償対応になります。

 

これはハウスメーカーに限らず、建設業界に古くからある共通認識です。

 

もともと当たり前であることをほんの少しだけ味付けをして特別であるかのように。

他社との差別化を図り、消費者の購買意欲を高めるための思考プロセスには、一定のパターンがあるように思います。

 

 

【画一的な住宅産業

 

本来、家と気候環境には密接な関係があります。

 

暑い地域か寒い地域か、雨の多い地域か雪の多い地域か、海に近いのか山の中なのか、、、

地域によって、家に求められる性能は様々です。

 

だから地域によって、家の形や構造にも違いがあるのは当然です。

 

戦後の高度経済成長期に必要とされた、都市居住における大量生産大量供給の画一的な家づくりという、、

そういった価値観の亡霊が、今も我々の世に留まり続けているように感じます。

 

 

確かに、戦後の極端な住宅不足から、その「住宅産業」がどれほど日本社会に貢献したかは計り知れません。

しかし歴史の常として、成功したものは必ず負の遺産を残すことになります。

 

 

「住宅産業」が残した負の遺産は、規格建材や工業製品を大量に使った、コスト最優先の画一的な家づくりの方式です。

 

極端に言えば、北海道から沖縄まで多少のスペックの違いはあれど、基本的に同じ概念のもとに家をつくっているということです。

 

これは景観という社会資産の形成に重要な、各地域の風土・気候に根差したアイデンティティも有していません。

 

 

本当にサステイナブルな世の中をつくっていこうとすれば、それぞれの地域の歴史と文化を未来へ繋ぐことを考えなければなりません。

 

そして培うべきは多様性です。

 

今の日本の住宅施策は、国際的な脱炭素傾向に則り舵取りを行っていること以外は、基本的に無策であると思えてなりません。

 

 

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