建築家と建てるvol.1

「地域の方々に愛されるイートインスペースのあるお弁当店」

オーナーシェフのもとにモノづくりのプロが結集して創り上げた、明るく利用しやすい、地域に開かれたお弁当とお惣菜のお店

建築家と建てるvol.1は 地元で幅広い世代から愛されているお弁当屋さん「Cooking Plaza(クッキングプラザ)」の店舗兼住居。
クライアントの堀氏が7年前に先代から引き継いだ店舗を建替え、敷地も広げて2016年12月にリニューアルオープンしました。

今回は、クライアントでCooking Plazaオーナーシェフの堀氏、棟梁大工で矢羽田工務店代表取締役の矢羽田氏も交えてお話させていただきました。

写真中央:Cooking Plaza オーナーシェフ 堀氏 / 写真右:矢羽田工務店 代表取締役 矢羽田氏

7年越しの想いを満を持して実現

地元を離れて東京で暮らしていた堀氏がCooking Plazaを継ぐ事を決意したのは今から7年前。
当時のCooking Plazaではがっつり食べる男性と年配の方が多く、女性や学生さんは少なかったそう。
もっと幅広いお客様に気軽に寄っていただける店舗にしたいという想いを胸に、10年後のリニューアルを目標にスタート。
当初の計画より3年も早く、2016年12月に新店舗の竣工が実現しました。

中身は必ず外に出てくる

堀氏

知人を通じて北條さんと矢羽田さんに会して、この方に依頼したいと思いました。誤解されちゃうかもしれないけど、理由は見た目です。見た目が悪くても、良い人はいるって言うけど、やっぱり身なりがきちんとしていて、佇まいや話し方は重要だと思います。中身は必ず外に出てくるし、ごまかしはできないですよ。

オーナーシェフの堀氏は自らが厨房に立ち、調理します。

仕事を受けるまでの姿勢

堀氏

北條さんと矢羽田さん、二人に共通していることは、仕事を受けるまでの仕事の姿勢ですね。
北條さんは初めてお会いした時に既に提案図面を持っていたし、矢羽田さんも店を営業しながら新店舗の工事をしたいと言う要望に対して、前向きに相談に乗ってくれました。

私も同じで、仕事を受けるまでの姿勢が大切だと考えています。
以前、保育園の卒園式の担当になったお母さんが来店された時の事ですが。 大量のお弁当を注文したことが無く、お困りのご様子でした。情報がお役に立てばと思い、他園の事例をもとに仕上がりのイメージと価格の目安と合わせて、アレルギー対応の注意点をお伝えさせていただきました。

作っているものは違っても、仕事に対する姿勢っていうのは共通していると感じました。
そういうのって、やっぱり見た目に現れるし、お会いすれば分かるものですよ。

矢羽田氏

誰でも面倒な事はしたく無いと思いますが、その面倒くさい事をきっちりやれば、良い物が出来ると思います。例えそれが仕上がりでは見えなくなっても、お施主様に気付いてもらえなくても、いつかは気付いてもらえると思うので…。
まぁずーっと気付いてもらえない事もありますが…。

良い意味で遠慮しない関係

堀氏

家やお店は大きな買い物だから、パートナーではなくて「頼む側」と「頼まれる側」という立場になってしまいがちだと思うんですよね。私はその辺が比較的無頓着だし、「気分を悪くされたらどうしよう」とか、それを考え出したら私自身も何も言えなくなって難しくなりますから。

北條

私から見た堀さんは、人生におけるあらゆる自分の決断に責任を持って行動されています。契約に至るまでの基本計画での決断も一つ一つを「よし、これで行こう」という気合いが入っていて、こちらも生半可な気持ちでは出来ないと感じましたね。こちらの意見をお伝えしても前向きな話し合いができる安心感があって、「クライアント」「施工者」「設計」が何でも話し合える、本当の意味での信頼関係が築けましたね。

矢羽田氏

より良いものを作るには、お互いの立場を尊重しながら意見をしっかり伝える事が大切だし、遠慮してしまっては良いものは出来ないですからね。そういう関係を築ける現場は楽しいし、意見を言い合ってより良い物を作るために、困難を乗り越えながらも次のステップに進むのが楽しみで、面白かったですね。

北條

設計の立場から言うと、私がこうしたいという事ではなく、こうした方が良いだろう使いやすいだろうとものがあって、外観のデザインからコンセントの位置まで、これは絶対に良いと責任を持って提案できるものだけを提案しています。小さな事から大きな事まで色々決め事がある中で、きちんと説明をすれば提案についてすぐに納得していただける堀さんは凄いと思います。とてもスムーズに進む現場でしたね。

堀氏

打合せ楽しかったですね。

矢羽田氏

仲良しと言ってはダメですが、何でも言えるような、もちろん言っていただけるような関係になっていきましたよね。

パン屋さんのような動線でお客様のストレスフリーを実現した惣菜スペース

建築家と建てた新店舗

堀氏

新店舗をオープンしてから女性のお客様は増えていますね。
以前はあまり馴染みがなかった、界隈におられる学生さんたちや先生方も来てくださって、雰囲気も良いのでこちらのテンションも上がります。
パン屋さんのように、お客さまがグルグル回ってストレス無く買い物ができるようにという希望も実現して「あのお惣菜を取りたいのに…」「あのお客さんでお弁当が見えない…」という事もありません。

北條

Cooking Plazaさんは、注文してから作るお弁当に加えて惣菜やイートインスペースもあるので、実際はワンウェイで回る訳ではないので、動線は悩みましたね。
注文したお弁当を待つお客様とイートインスペースの動線を分けることで、ストレスの少ない動線に仕上げました。

堀氏

今回の店舗づくりを一言で言うと、作っていて楽しかったですね。次回は私の家をお願いしようと思っています。

北條

堀さん、矢羽田さん、今回は貴重なお時間を頂きありがとうございました。
設計打合せで、厨房の動線や売り場のレイアウトなど、本当に真剣に意見を交わし合いましたね。
本気で良いものを一緒に創り上げるという姿勢が建築には大切なんだと改めて感じる機会でありましたし、私自身とても楽しくやり甲斐のあるお仕事でした。