日々是建築コラム

2021年01月30日日々是建築コラム 1章 はじめに

【はじめに】

 

『日々是建築』というタイトルには、毎日毎日建築に関わるいろいろなことを前向きに考えていきたいという思いを込めました。

 

インターネットやSNSを中心に情報が溢れる現代において、専門的な知識や情報は断片化され年々煩雑さを増しています。

それらは特定のケースやある側面においてそれぞれ正解を持つことがありますが、表面上の結果を切り取って判断することは大きなリスクを含んでいます。

 

建築はとても幅広く、複雑で、そして進歩も目覚ましい世界です。

 

なにが正しいのか、なにを選択したらよいのか、さまざまな場面で悩まれているケースが多いことでしょう。

どこかの誰かが導き出した答えではなく、自分自身にとって一番適切な判断を行うために、正しい検討の進め方に触れることで情報判断が正確にできるようになると考えています。

 

何か建築をしようとされている方々の悩みや迷いが少しでも晴れることを願い、あらゆる場面でお役に立てるようこのブログを育てていくことができれば幸いです。

 

 

【いろいろな呼ばれ方】

 

さて私の職業は「建築家」ですが、「建築士」とか「設計士」とか「設計者」とか「監理者」とか、日ごろいろいろな場面で異なる呼ばれ方をします。

区別がややこしいので、手っ取り早く「先生」と言われることも多いですね。

 

それぞれ細かくみていきましょう。

 

 

まずは「建築士」

これは資格免許の名称です。

建築士法第2条第1項に、『一級建築士、二級建築士及び木造建築士をいう』とあります。

少し意外に思われるかもしれませんが、建築士資格を使った仕事は士業です。

業種は建設業ではなく、サービス業に分類されます。

 

次に、「設計士」と普段言われたりすることもありますが、実はこれは俗称ですね。

「設計士」という資格はありません。

また業務上も設計士という言葉は正式には存在しませんし、我々が自らを指す言葉としても使いません。

一般の方々が我々のことをあまり区別なく呼ぶときに、耳にする機会があるといった感じです。

 

「設計者」はシンプルです。

建築士法第2条第5項に、『「設計図書」とは建築物の建築工事実施のために必要な図面(現寸図その他これに類するものを除く。)及び仕様書を、「設計」とはその者の責任において設計図書を作成することをいう 』とあります。

すなわち「設計者」とは、ある特定の案件について、設計責任を負って設計図書を作成した人を指す言葉です。

これは業務でも会話の中でよく使いますし、建築確認申請書にも記入欄がある正式な用語です。

 

「監理者」についても同じことが言えます。

建築士法第2条第6項に、『「工事監理」とは、その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認することをいう』とあります。

すなわち「監理者」とは、ある特定の案件について、設計図書の通りに工事が実施されているかどうかを確認する人を指す言葉です。

※監理と工事監理は正確には異なりますが、この章の本題ではないので、その説明は後の章に譲ります。

 

最後に「建築家」について書きます。

冒頭、私の職業は「建築家」と書きましたが、「建築家」の定義は時代や社会、また人によって微妙に差があるように思います。

私に言わせれば、「建築の設計・監理業務を、クライアントとの業務委託契約に基づいて自ら独立主体的に行う者」といったところでしょうか。

設計や監理をしていたとしても組織に属していたり、また独立していたとしてもクライアントからの直接の委託業務がなければ、「建築家」とは呼ばないですね。

 

 

【建築は人間そのもの】

 

建築は単に建物であるという意味合いを超えて、人間そのものの歴史と多様性を物語る存在にもなっています。

人間の生活と切り離すことができない存在であるがために、あらゆる建築には思想や哲学が宿っています。

 

さて次章では、そんな建築を生み出す「建築家の本質」について、私なりの考えをまとめていきたいと思います。

 

 

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