所長BLOG

2020年11月15日所長BLOG vol.5 京町家セミナーを終えて

もう15年ほど前の話になりますが、当時建築を学ぶ学生だった私にとってその後の人生を決める大場先生の言葉がありました。
 
建築史の講義の冒頭、先生は学生一人一人にこう問われました。
 
「歴史をなぜ学ぶのか?」
 
そのことを考えた時間を今も鮮明に覚えています。
それは「未来を創るため。」
 
今となっては当たり前に感じる、根源的な動機を知ったとき、無限に建築の世界が広がったのです。
 
それがすべてのはじまりです。
 
我々設計者は、社会やクライアントの需要に応えるなんて当たり前のことで、それとは別次元で、遥か千年以上に及ぶ先人達の英知を未来へ繋いでいくことがとても大切なことだと私は思うのです。
 
「いまの建築教育や実務において、建築の歴史を学ぶ機会がほとんど薄れてしまっている。既存の良質な建築を実地調査・測量し、野帳を描き、図面化するという機会を充分に得ずに、プロの設計者になっていくケースがあまりにも多い」
 
講演会が終わったあとの雑談で、大場先生がそう仰っておられたことも印象に残りました。
 
設計者は唐突にこの世に生まれた神様のような存在ではなく、また社会の断片的な需要に対して素直に迎合することも真の意義ではないと。
 
社会や自然環境に対して大きな影響を与える存在であるからこそ、決して驕ることなく、史学自制を美徳とし、サステイナブルな価値を生み出していく活動をしなければならないと、改めて認識する機会になりました。
 
『京都人が知らない京町家の世界 ―京町家とはなにか―』を終えて。
※JIA(公益社団法人日本建築家協会)近畿支部住宅部会主催
 
設計者の未来に向けた大変おもしろく意義深い講演をしてくださった大場先生、織屋建町家の現存する典型例として貴重な「生駒家住宅」を講演会場として提供してくださった生駒さん、一緒に世話人をしてくださった建築家の福山さん、どうもありがとうございました。
 
末筆ではございますが、本オンライン講演会にご参加いただいた方々に対しましても、重ねて厚くお礼申し上げます。
 

 

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