建築企画、設計、監理 / 土地、建物のコンサルティング

INTERVIEW

「障害者短期入所施設」

古い家屋をリノベーションして社会貢献

建築家と建てるvol.2は、木造平屋のリノベーションストーリーです。
「障害者の方々とそのご家族のために」という思いを込めて、2017年4月にオープンした障害者短期入所施設『あじさいの家』。

「一般社団法人アフター」の代表理事・藤野氏と、紹介者である不動産会社「株式会社グルグル」の営業部長・道浦氏も交えて、3人でお話させていただきました。

▲写真中央:一般社団法人アフター 代表理事 藤野氏 / 写真右:株式会社グルグル 営業部長 道浦氏

【プロフィール】
一般社団法人アフター
代表理事 藤野景之さん
高校卒業後、自動車整備や配達業などの会社員時代を経て、
2011年10月、31歳で一般社団法人を設立。
2012年9月、大阪府の障害福祉サービス指定事業者へ。
現在、和泉市や松原市などで、障害者向けの短期入所施設、
シェアハウス、作業所、相談支援事業所などを運営する。
直感を大切に前向きに行動する情熱家。
道浦氏曰く「地元イチの頑張り屋さん!」

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株式会社グルグル
営業部長 道浦義和さん
堺市駅前にて土地建物の売買仲介や管理などの不動産業を営む。
20〜30歳までキックボクシングのプロ選手として活躍した後、
父親が興した家業を継ぎ、気さくな性格と幅広い人脈で地域の
人々から信頼を集める。
今回のクライアント・藤野氏とは学生時代からの旧知の仲。
ベンチプレス目標100kgでジム通い中(現在95kg達成!)
「体力と根性には自信あり」

株式会社グルグル公式ホームページはこちら

昔ながらの日本家屋がローコストで福祉施設に

北條:

藤野さんは、私の前職時代からの知り合いでもある道浦さんに紹介していただいたんですよね。

藤野氏:

そうでしたね。北條さんの第一印象は「物腰も柔らかく、話しやすい方だなぁ」でしたね。正直「この人、ちょっとしんどいなぁ」って思う相手っているじゃないですか。初対面からそれが全くなかったので、自分の思いを何でも話すことができましたね。

道浦氏:

でしょ。誰に紹介しても北條さんのことを悪く言う人はいませんから。

北條:

お褒めいただきありがとうございます。私は、藤野さんとお会いしてまず思ったのが、えっと、、、「理事長っぽくないなぁ」って。

一同:

道浦氏:

チャラそうやなぁって思ったんでしょ?

北條:

いえいえ。「理事長っぽくないなぁ」って、いい意味でですよ。とてもソフトな印象で服装もわりとラフだったもので、私も話しやすかったです。で、ご要望を聞いての率直な感想は、「これはなかなか難しい案件だなぁ」。けれどこちらがプロの立場でいろいろとお話する中で、藤野さんの施設に対する強い意気込みを感じたので、こちらとしても気合が入りましたね。

道浦氏:

難しいっていうのは、建物の状態を見て思ったんですよね。僕はこの建物の以前の姿を知っているだけに、このビフォー・アフターにはびっくり!ちなみに築何年だっけ?

藤野氏:

いやもう不詳ですね(笑)。ほんとにボロボロでしたから。もともと親戚の住まいだったんですが、住み手のいなくなった古家を何とか有効活用したいと思ったんです。

セルフビルドで施設への愛着もたっぷり

道浦氏:

北條さんは、設計を進める中でどういった点に苦労されましたか。

北條:

障害者施設の利用者さんは、自由に動ける方ばかりではないのですが、建物の耐久性などいろいろ考えたときに、バリアフリー化するのは難しい。また、建物として必要な耐震性や断熱性など、基本的な性能を確保するのもなかなか難しそうというのが、最初の印象でした。あと、ご予算のほうもかなり厳しめでした。藤野さんから最初に「これどれくらいかかります?」って直球で聞かれたのがすごく印象的でした。

藤野氏:

むしろ建て替えた方がいいかも、というような流れにもなりましたもんね。

道浦氏:

へぇ、そうなんや。まぁでも、予算はどこも厳しいですからね。

北條:

そうです。それで、設計上のアイデアで、藤野さんの思いをなんとか叶えられたらなぁと。コストを抑えるための工夫もとことん話し合いましたね。例えば、玄関は今ある場所とは反対側にあったんですが、土地の構造上、入口は現在の場所がベストだと考えました。それで、もともと玄関だった土間コンクリートをそのままユニットバスの基礎として活用したんですよ。それでコストも抑えることができました。

道浦氏:

ほぉ、さすが。で、この壁は藤野くんが塗ったらしいね?

北條:

はい。クライアント自らこんなに動いていただいたのは珍しいくらい。内壁や柱、外壁など、塗装をほぼセルフでされました。Facebookで藤野さんが塗っておられる写真を見て、これは私も塗りに行ったほうがいいのかなぁと(笑)。

藤野氏:

あ、プレッシャーかけてました?すみません。ローコストゆえのセルフビルドも多かったですが、大変だと思ったことはなく、常に楽しかったですね。リノベーション期間は2月〜3月の真冬で、しかも夜間に作業していたので震えながら塗ったのを覚えてるんですけど、やっぱりその分愛着もわきますよね。

▲利用者が安心して過ごせるようにバリアフリー化

今後への学びが詰まった今回のリノベーション

道浦氏:

どこが一番気に入ってる?

藤野氏:

もう全部ですよ。水周りの位置も変えていただいたんですよ。

北條:

そうです、どうしてもベッドを4つ入れたいということで、水周りを玄関の方に寄せて、部屋をなるべく広く使いました。居室の最低床面積が規定で決まっていますからね。

藤野氏:

今回のリフォームで障害者支援施設の指定基準などもいろいろ知ることが出来て、全てが勉強の連続でした。本当はもっとベッド数を増やしたかったので、ロフトを居室として活用して、、、とも考えたんですが、規定でロフトは居室の面積に含められないとわかったので、ロフトは割り切って全て収納にしたんです。今後につながるいい経験になりました。

道浦氏:

1月から始めて3月に完成。2017年4月にオープンだっけ。

藤野氏:

はい、現状、利用者の方はほぼ継続して使ってくださっているのが嬉しい。障害者支援施設では少なからずあることなんですが、抜け出そうとする方も全くおられない。その事実が、ここが居心地がいいってことの証明かなと思っています。

難しい案件だからこそ完成の喜びもひとしお

藤野氏:

打ち合わせも楽しかったですね。最初に譲れないと思っていた条件も、北條さんとお話している中でどんどん変わっていきましたね。ご提案上手なんで。

北條:

いえいえ、藤野さんがとても柔軟でいらっしゃるんですよ。基本的にはご要望や施設の方向性に沿う形で提案しますが、「出来ること」と「出来ないこと」があって、また「出来るけどクライアントが後で損をする可能性が高いこと」もあるんですよね。そういう視点で包み隠さずアドバイスをしました。

藤野氏:

確かにそういうやりとりが多かったですね。とにかく何でも質問、相談しました。北條さんご自身も過去にされたことのないことをしてくれてたんじゃないかな。ウルトラC的な。

北條:

正直ありましたね。でもウルトラCが出来たのも相手が藤野さんだったからこそ。そのときOKとおっしゃっていても、実は後で揉めたりしないかとか、その辺も含めて、正直に提案したら全部受け止めてくださったので、こちらも予め安心感がありましたね。

道浦氏:

めちゃくちゃ良好な関係やね。

藤野氏:

工務店さんには「ほんまにいいんですか?」ってめっちゃ言われましたけど(笑)。けど今、実際、自分でもびっくりするほど後悔がないです。「もっとこうしとけば良かった」という部分が全くないのは、本当に言いたいことを全て出し切って打ち合わせできた結果だと思います。

北條:

それを聞けて私も嬉しいです。建物のデザインだけでなく、運営を長く続けられる方向性までを見据えて提案することが設計の大きな意義だと思っていますので、そう言っていただけたなら本望です。ルドも多かったですが、大変だと思ったことはなく、常に楽しかったですね。リノベーション期間は2月〜3月の真冬で、しかも夜間に作業していたので震えながら塗ったのを覚えてるんですけど、やっぱりその分愛着もわきますよね。

▲クライアント自ら塗装した内観

同業者からの問い合わせで施設の素晴らしさを再認識

藤野氏:

今回、北條さんと一緒にリノベーションさせていただき、築年数不明の古い建物を使って、ローコストでこんなに素晴らしい施設ができるということが証明できました。今後、同じような施設を始める際も、元となる建物の選択の幅が広がったと思います。そりゃ新築がベストかもしれませんけど、まだまだ僕らみたいな駆け出しには新築はコスト的にも難しいのが現実です。僕らと同じような規模の法人や企業にも、全国にあるこういった古い建物を有効活用しながら社会貢献できるという、いいモデルケースになったんじゃないかなと思っています。

道浦氏:

素晴らしい!

藤野氏:

実際、近隣の同業の方から問い合わせがあって、いろいろ質問されましたし、何度か見学にも来られたんですよ。「藤野くん、ちょっと見せてよ〜」って。

北條:

おぉ、もうすでに参考にされる施設になってるんですね!

道浦氏:

やるなぁ!

北條:

素晴らしいですね、私も嬉しいです。

道浦氏:

ていうか、北條さんを紹介したん、俺やからな。

藤野氏:

感謝してます、先輩!

一同:

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